表現の自由を守り、真実を伝える放送を確立する決議
【提案:労連本部】
昨年一月に東京メトロポリタンテレビジョン(MX)が放送した、沖縄の米軍基地反対闘争に携わる人々を取り上げた番組『ニュース女子』に対して、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は先月、「重大な放送倫理違反」とする決定を公表した。
同委員会は放送された内容に関して、沖縄に赴いて現地調査も行い、事実関係について極めて詳細な検証を行った。本来、こうした検証は、調査報道の手法を用いて放送局が自ら行い、視聴者に対して番組を通じて説明することが期待されていたものだった。今回、現地調査を踏まえてBPOから非常に厳しい指摘があったことを、MXの経営陣はもちろん、放送の現場で働く私たちも重く受け止めなければならない。
BPOの検証活動により、ネット上に蔓延している沖縄への差別的な言説は、根拠に乏しい意図的な虚偽情報であることが改めて明らかになったと言える。最近はこうした情報も含めて「多角的な論点」として紹介されるケースがみられるが、事実に基づかない「論点」は、国民の知る権利の妨害に他ならず、「両論併記」にはなりえない。誤った情報を正して、真実を広く伝えるよう心がけるとともに、私たち民放労連は、沖縄の人々に寄り添う努力を今後とも続けていくことを表明する。
一方、国際社会の厳しい目も存在する。昨年一一月、国連人権理事会は日本政府に対して、「政治的に公平であること」などを規定した放送法四条の廃止を含め、表現の自由の観点からの政策見直しを提言した。これは一昨年二月、当時の高市早苗総務相が、政治的公平が疑われる放送が行われたと政府が判断した場合、その放送局に対して放送停止を命じる可能性に言及したことなどを受けたものだ。
放送法三条は「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と規定し、政府や政権政党が放送の内容に不当に介入することを厳に戒めている。総務相発言は、それ自体が放送法違反であり、撤回されなければならない。放送法四条を理由とした政府からの圧力に対しては、放送関係者が放送の自由を主張して、毅然とはねのければいいはずだ。ここでは、権力に迎合的な放送経営者の姿勢が厳しく問われているとともに、それを厳しく監視し追及する労働組合の存在が、諸外国からも期待されていると言える。
放送で働く者が、不当な圧力に屈することなく、放送・表現の自由を守り、視聴者から信頼される真実の放送を確立することを、改めて求められている。こうした期待に応えるため、私たちはよりいっそう奮闘していくことをここに宣言する。
右、決議する。
二〇一八年一月二八日
日本民間放送労働組合連合会 第一二六回臨時大会