第124回日本民間放送労働組合連合会臨時大会 アピール

大会アピール

「命より大切な仕事などありません」。電通過労自殺事件が大きな社会問題になっている。マスコミ業界にとってはあって当然として本気の対策が講じてこられなかった「長時間労働」をなくす取組が求められている。厚生労働省は「過重労働撲滅特別対策班(本省かとく)」を新設するなど、監督体制の強化を急いでいる。もはや労基署対策の長時間労働を隠すためだけの裁量労働制の導入のような姑息な対策では、働くもののいのちと健康を守る経営者の責任を果たすことはできない。経営者のみならず労働者の側にも「長時間労働」の改善に向けた当事者の自覚が厳しく求められる。私たちは東京・両国で開かれた民放労連第一二四回臨時大会に集まった。

地上波テレビのデジタル化を直前に控えた二〇年ほど前、莫大な設備投資と広告収入の減少におびえた民放経営者は、「正社員の削減と一人当たり人件費の削減による総額人件費の削減こそが民放の生き残り策」として、アウトソーシングと称した外注化、派遣労働者の導入、そしてベアゼロ、一時金の大幅削減をすすめた。「放送の仕事にあこがれる若者はたくさんいる」と豪語し、低賃金で劣悪な労働条件の労働者を放送の現場に導入していった。

しかし、今、放送の仕事から離れていく若い労働者が増えていることがこの大会で明らかになった。会社が従業員の募集をかけても人が集まらないと深刻な状況が報告された。放送の仕事が長時間労働にさらされていること。長時間労働が当たり前に受け入れられる土壌が放送産業に蔓延していること。放送局正社員とプロダクションや関連会社の労働者の間に、不条理としか言いようがない格差が広がっていること。そのような民放産業の「負の構造」が放置されたままだということが原因にほかならない。

「放送の未来のために取り戻す、人間らしい働き方とくらし」という大会スローガンを私たち民放労連に加盟する労働組合は、真剣に考え、一七春闘での要求に活かしていこう。長時間労働の削減のために実効ある制度の構築を求めていこう。「同一労働同一賃金」を実現するための一歩を踏み出そう。

アベノミクスの失敗と日本経済の低迷がより一層鮮明になってきた。個人消費は二年連続のマイナス、実質賃金も五年連続のマイナスで、国民の暮らしは苦しくなるばかりだ。一七春闘では、生活を防衛するための賃上げ=ベースアップを必ず勝ち取らなければならない。賃金の生計費原則にのっとり、すべての働く人の暮らしを改善する大幅賃上げを実現していく。

「一万人の民放労連」をめざした「構内労働者プロジェクトⅡ」で、私たちは「正社員組合」からの脱却こそが新しい労働組合のあり方だと学んだ。私たちは構内労働者の問題を自らの問題として位置づけ、組合として要求を勝ち取っていくことで、構内労働者の組織化に今こそ本気で取り組んでいく。

グローバリズムの新自由主義改革のもとで、格差と貧困が深刻化。怒りと閉塞感が社会を覆いつつある。マスメディアとして健全な市民社会をつくっていく使命を果たし、私たち民放労連は放送の未来に責任を持たなければならない。いまこそ取り戻そう!人間らしい働き方と暮らしを!

 

二〇一七年一月二九日

日本民間放送労働組合連合会 第一二四回臨時大会