民放労連は、総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会第一次取りまとめ(案)」に関し、意見を提出しました

「放送を巡る諸課題に関する検討会第一次取りまとめ(案)」に関し、別紙のとおり意見を提出します。

(要旨)

1.最重要課題は放送の自律を守ること

2.放送局支配に関する規制緩和は必要ない

 

放送を巡る諸課題に関する検討会第一次とりまとめ案に対する民放労連の意見

 

1.最重要課題は放送の自律を守ること

今年、放送を巡ってもっとも大きな社会的関心を招いたのは、総務大臣が、番組の内容によっては電波停止の処分を下す可能性がある、という趣旨の発言をしたことであった、と言える。憲法が保障する言論・表現の自由、放送法が保障する放送番組編集の自由を脅かすような発言が所管大臣から繰り返し行われたことは非常に憂慮すべき事態であり、政治的圧力と言わざるを得ないこうした言動から放送の自律をいかに守るか、という課題が、最優先で検討されるべきである。

こうした発言が堂々と行われ、一方で当事者であるはずの放送事業者からは的確な反論がほとんどなされない、という今日の状況が生じているのは、放送事業を営むにあたって不可欠な要素である放送免許が政府による直接免許制に置かれ、そのことが放送局に威嚇効果をもたらしているからに他ならない。先進諸国の間では独立行政機関による間接免許制が一般的であり、現在の日本のような制度は極めて異例なものである。日本にもかつて短期間存在した電波監理委員会による放送行政の再検証を含む、制度上の問題を検討することなしに、放送の自律は確保できないと考える。

この「第一次とりまとめ案」に、こうした放送制度・放送行政の根幹にかかわる問題意識がまったく欠落していることに、猛省を促したい。

 

2.放送局支配に関する規制緩和は必要ない

第二章「今後の具体的な方向性」の(2)「地域に必要な情報流通の確保」の末尾に、「認定放送持株会社制度の子会社数の制限の緩和等」という文言が唐突に出ている。このような規制緩和策は、大資本による放送事業の経営の選択肢の拡大にとって有利な制度整備ではあっても、地域の放送を担う個々の放送事業者には、いったいどのような影響が及ぶのか。むしろ放送局の統廃合などによって、地域の視聴者の情報環境への弊害となるおそれが強いのではないか。

とりまとめ案の中に「各放送事業者からのヒアリングにおいてはこれらの制度等を含めた制度改革に対する要望はなかった」と書かれているのに、そのすぐ後段に、認定放送持株会社制度の規制緩和について「検討を進めていくことが適当」と記載してあるのは、論理的な整合性がなく、理解不能である。

現状では、ただでさえキイ局による系列ローカル局の支配が進行している上に、情報源の東京一極集中をさらに推進しかねないような規制緩和は、地域情報確保の観点からまったく不要である。むしろローカル局の番組制作能力の確保・拡充のために、人的・経済的な支援制度を整備することこそが検討されるべきではないか。

以 上