圧力に屈することなく、放送の自由を守りぬく決議
【提案 労連本部】
先におこなわれた参議院選挙に際して、テレビ・ラジオなどマスメディアは、有権者に必要な情報を送り届ける報道機関としての機能を、十分発揮できたと言えるだろうか。報道番組や開票特番の制作に当たった大勢のスタッフの努力にもかかわらず、「選挙報道の質も量も低下している」と視聴者から厳しい批判にさらされている。
それが政治的な圧力による萎縮や自己規制の結果によるものだとしたら、まことに憂慮すべき事態だ。
高市早苗総務相が今年二月、政治的公平が疑われる放送が行われたと政府が判断した場合、その放送局に対して「行政指導しても全く改善されず、公共の電波を使って繰り返される場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにいかない」と述べ、放送法四条違反を理由に電波法七六条に基づいて電波の運用停止を命じる可能性に言及した。これを受けて総務省も、放送番組の政治的公平の判断において、大臣答弁と同趣旨の「政府統一見解」を明らかにしている。
しかし、「放送番組編集の自由」を基本とする放送法が、その自由を抑制するために権力者たちに利用されるというのは、およそ信じられない事態ではないか。放送法第三条に「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」とあるとおり、政府や政権政党が放送に不当な圧力をかけることこそ、放送法違反行為として責任を問われなければならない。
一連の大臣答弁や総務省の見解は、権力者にとって都合の悪い番組を放送させないよう、放送局に露骨な圧力をかけて報道活動の萎縮を狙うもので、絶対に許されない。そもそも、世界中のメディアからその動向を監視される立場にある日本政府が、放送番組の政治的公平性を判断しうる立場にあるはずがない。今年二月末にテレビキャスター有志が「私たちは怒っている」とするアピールを公表して一連の大臣発言を厳しく批判したが、その怒りは放送の現場で働く私たちすべてのものでもある。
視聴者の厳しいメディア批判は、「テレビをはじめとするマスメディアが、権力者と結託して国民の知る権利に応えようとしない」と感じているからに他ならない。首相と頻繁に会食するなど、一部のメディア企業のトップの姿勢は目に余るものがある。このような経営者たちが自ら襟を正すことを、私たちは強く求める。
同時に私たち放送労働者自身も、さまざまな圧力に屈することなく、放送の自由を守りぬくために、よりいっそう奮闘することを誓う。
右、決議する。
二〇一六年七月三一日
日本民間放送労働組合連合会 第一二三回定期大会