2025年4月25日
日本民間放送労働組合連合会
中央執行委員会
国会議員公設秘書が取材活動中の報道記者に対して性暴力を行ったことに対する国家賠償請求訴訟が、4月24日に判決を迎えました。
二次加害のおそれもある中で、国を相手に訴訟を起こし、ジェンダー平等や取材・報道の自由をめぐる社会的な課題に向けて、身をもって挑んだ原告に、最大限の敬意を表します。そして、ともにこの裁判をたたかった弁護団、早くから支援に駆けつけた全国各地の皆さん、そしてこれまで力強く支援していただいたMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)に結集する仲間たちに、心から労いの言葉をかけたいと思います。
判決は、公設秘書の職務行為だったと認め、国が原告に440万円を支払うことを命じる勝訴判決でした。原告の訴えを聞き届け、「個人的な付き合いだった」という国側の主張を明確に退けました。
事件は2020年3月、上田清司参議院議員の当時の公設秘書が、取材活動中の民放労連放送スタッフユニオンの組合員である報道記者に対して、情報提供をほのめかして会食の席に呼びだし、性加害に及んだものでした。組合員は警察に被害届を提出し、公設秘書は書類送検されましたが、その直後に自死したため、不起訴処分とされました。それから3年後の2023年3月8日、公設秘書の行為は公務員の職権濫用だとして、国家賠償を求める訴訟を起こしたものです。
裁判で国側は、公設秘書と記者とは「個人的なつきあい」だったとして職務権限を否定し、全面的に争いました。国側の主張は、原告に対する二次加害とも言えるような時代錯誤のもので、裁判の終結間際には「被害者が抵抗し尽くしたことを証明できていない」などと、原告の尊厳を傷つける主張まで出してきました。原告側は、取材の機会につけこんで行われるハラスメントや性暴力は、民主主義社会に不可欠な取材・報道の自由を侵害するもので、記者としてのキャリアと人間としての尊厳を根底から奪う「差別と暴力」であることを強く訴えました。
この裁判で司法が、国会議員秘書が記者と会食することを業務と認め、そのうえで起きた性暴力だったと判断したことは大きな成果です。判決は、今回の性暴力を「当時の準強制わいせつ罪・準強制性交罪に相当する行為」と認定し、国に損害賠償を命じました。かねてより、メディアで働く女性は、職場でハラスメントを受けるなど身に危険を感じることが少なくないという訴えが、労働組合には多数寄せられていましたが、それをプライベートの問題だと片付けられてきたケースが少なくありませんでした。
私たちは、今回の判決で原告がその尊厳を取り戻すこと、また報道の現場で働く人たちの安全がより守られるようになることを望みます。
以 上