2024年4月8日
日本新聞協会会長 中村 史郎 様
日本民間放送連盟会長 遠藤龍之介 様
日本民間放送労働組合連合会
中央執行委員長 岸田 花子
去年9月、公正取引委員会は、ヤフーなどの巨大IT企業が運営するニュース配信のポータルサイトやアプリに対して、ニュースの提供元である報道機関に支払う記事使用料の差が大きいことをめぐり、「優越的地位の濫用」となり得るという実態調査を公表しました。
この公正取引委員会の公表により、私たち新聞社やテレビ局が苦労して取材・出稿したニュース記事がいかにIT企業によって安く買いたたかれているか、その一端が初めて浮き彫りとなりました。
また、政府は、今年1月に労務費や原材料費の上昇分を価格転嫁できていない22の重点業種を発表しましたが、ここで「映像・音声・文字情報制作業」が名指しされています。つまり私たちは政府から価格転嫁を進めるようすでにお墨付きをいただいているのです。
しかし、両業界とも、その後、価格転嫁は進んでいません。
その結果、今年の春闘においては、政府や経済界、労働組合がそれぞれの立場で物価高を上回る賃上げができるよう求めていますが、新聞各社や民放各社、その下請け企業において、現状ベースアップをはじめとした賃上げは十分といえるほど進んでいないのです。
そこで今回、新聞協会と民放連に対し、ニュース配信サイトやアプリを運営するIT企業への価格転嫁を進めるよう、つまり記事使用料の値上げを求めるよう強く要請いたします。
はっきり申し上げますが、私たちが取材し、出稿した記事は安く買いたたかれるべきものではありません。国民の知る権利に対し、取材を尽くし、十分な情報を提供することは、なくてはならない「社会のインフラ」です。
タダでは記事は書けません。取材や出稿、配達・放送を含め、記事を出稿するにあたっては、原材料費や交通移動費、それに物流費や人件費などあらゆるコストが上昇しています。こうしたコストアップ分を十分に価格転嫁することで、各企業やその下請け企業が十分な賃上げを一段と進めやすくなると考えます。
これまで十分に価格転嫁を進めてこなかったことで、賃上げが遅れ、新聞業界、テレビ業界の私たちのもとから、何人もの優秀な同僚たち・仲間たちが離職や転職で去っていきました。私たちは、これ以上人材流出が進めば、両業界の存続が危ういという危機感をかつてないほど強く持っています。
今年の賃上げは社会的な要請、時代の要請であります。どうか速やかに価格転嫁を進めるようよろしくお願いいたします。
なお、私どもでは、公正取引委員会をはじめとした政府やIT企業にも同様の申し入れを進める予定です。何とぞよろしくお願い申し上げます。
以 上