民放労連第129回定期大会「政府からの圧力を排し、視聴者から信頼される放送の確立をめざす決議」(2019年7月28日)

 官房長官会見で、特定の記者の質問制限を記者クラブに要請するなど、メディアに対する政府の有形無形の圧力が強まる中、放送のみならず、国内メディアの報道の自由が危ぶまれている。
 国連の「言論・表現の自由の促進」に関する特別報告者、デービッド・ケイ氏が、日本では現在もメディアの独立性に懸念が残るとする新たな報告書をまとめて、6月に国連に提出した。報告書の中では、日本のメディアが特定秘密保護法などで萎縮している可能性があるとして同法の改正や放送法4条の廃止を求めた2017年の勧告を、日本政府がほとんど履行していないと批判している。また、日本政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法四条についても、廃止を求めている。
 
 昨年春、放送法4条を撤廃し、放送とインターネットの規制を同等にする政府の内部文書が明らかになった。「NHKを除く放送は不要」などと記載されたこの文書が意図するものは、国連から指摘されている放送・表現の自由の観点とは真逆で、政府に都合の良い情報を自由に流すことのできるインターネットを重視する一方で、ジャーナリズムとしての公正な放送を軽視したものだ。
 
 7月の参議院選挙では、市民連合と野党の共通政策に「国民の知る権利を確保するという観点から、報道の自由を徹底するため、放送事業者の監督を総務省から切り離し、独立行政委員会で行う新たな放送法制を構築すること」が盛り込まれた。独立した機関による放送行政の実現は諸外国の常識であると同時に、民放労連のかねてからの政策要求でもある。国際社会からも注目されているこの機会に、放送制度をめぐる国民的議論を起こし、放送に働く者としてしっかりと意見表明していく必要がある。

 民放連は『「放送の価値向上・未来像に関する民放連の施策」に関する中間報告』をこのほど公表した。報告書には「ローカル局の経営基盤強化の研究や業務支援」「ネット・デジタル分野での事業拡充による放送の媒体価値向上」「放送コンテンツの海外展開」などが掲げられている。
 しかし、インターネットの発達により真偽の入り混じった情報が氾濫する現代において、視聴者がいま放送に求めているのは、正確で有意義な情報を届けてくれる番組であるはずだ。そのような番組を充実させることこそが、放送がこれからも視聴者からの信頼を得るうえでの責務ではないだろうか。そのためには、政府からの圧力を排し、番組作りの現場に対する積極的な環境整備が絶対条件であることは疑いない。私たちは放送局経営者に対して「人と番組を大切にする」経営方針への転換を、改めて強く求める。

右、決議する。

2019年7月28日           
日本民間放送労働組合連合会 第129回定期大会