ゴシップのひとつかと思われた吉本興業のニュースは、実情が明らかになるにつれ、雇う側と雇われる側、労使関係の歪みが注目を集めるものとなった。所属タレントによる会社の行く末を心配する声が紹介され、そのブラックな体質に多くの批判が集まった。
私たち放送産業は「ブラックではない」と胸を張れるだろうか。行く末を心配することなく、安心して働いていける状況だろうか。夢を持った志望者が集まる放送業界を作っていかねばならない。その当事者となる私たちは放送産業の新時代を切り拓くため、ここ広島に集まった。
大会では、テレビ山口労組からベテラン組合員が執行部に加わることによる運動の継承とそれがもたらした成果が報告された。この春闘で、就活生や若年労働者へのアピールとなる初任給アップや若年層へのベアを獲得した複数組合から力強い報告があった。
来年4月から施行される「同一労働同一賃金」。私たち労働組合の力が試される機会にもなる。私たち労働者が雇用形態の違いを乗り越えて団結することは、経営者を脅かすほどの大きな力を持つ。ブラック業界と指摘される状況から脱却し若年労働者にも夢と希望をもって働ける職場を残していくことが、私たち世代の使命である。そのためにも、政府が進める「解雇の金銭解決制度」と「裁量労働制の適用拡大」は、私たちの「雇用と生活」そして「いのちと健康」を脅かしかねないものとして、断固として反対する。
国連では、日本のメディアが、その独立性に懸念が残る状況であると報告されている。今大会でも、報道の自由の大切さとメディアとしての嗅覚の鈍化を危ぶむ報告が北海道放送労組からあがった。視聴者が今の放送に求めているものは、正確で有意義な情報を届けてくれる番組だ。そのために私たちは経営者に「人と番組を大切にする」経営方針への転換を求める。
安倍首相が5月3日の憲法記念日にも露わにした「改憲への強い意気込み」とは裏腹に、改憲を支持しない層が、支持派を大きく上回る世論調査の結果もある。充分に議論を尽くすことなく、改憲を強引に進めることは、世論を無視した民主主義の破壊だ。国家が優先される一方で、個人の権利や表現の自由が制限される社会の到来を阻止し、民放労連運動に憲法を活かしていこう。
昨年4月の財務次官によるセクハラ事件以降、あらゆるハラスメントを容認しない声が高まっている。ハラスメントは人権侵害に他ならない。誰もが安心して働ける職場を作ろう。そのために勇気を出して声をあげ、連帯していこう。
沖縄の辺野古埋め立ては沖縄だけの問題ではない。今年2月の県民投票では圧倒的多数の埋め立て反対票が集まった。この結果を無視して工事を強行する政府の対応は、民主主義も基本的人権も地方自治も、すべてをないがしろにするものだ。私たちは辺野古新基地建設の撤回を求める沖縄県民の意思を尊重する。
企業の発展を優先した「経済の論理」「効率の論理」では夢のある放送の未来を築いていくことはできない。未来を担っていく労働者のために「人間の論理」を取り戻そう。すべての放送労働者の団結により、労働組合の社会的な使命を果たすとともに、賃上げと労働環境改善で放送の未来をつくろう!
2019年7月28日
日本民間放送労働組合連合会 第129回定期大会