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民放労連第129回定期大会「展望が持てる放送の未来のために すべての放送労働者に団結を呼びかける決議 」(2019年7月28日)

 民間放送が誕生して六八年。日本の経済成長に歩をあわせて、民放産業は、政治・経済・社会・文化に影響を及ぼすマスメディアへと発展してきた。
しかし、その成長の影には、放送局正社員とそれ以外の構内労働者の賃金・労働条件の格差、雇用差別、放送局とプロダクション・関連会社との非対称な関係といった「負の遺産」を生じさせた。
 「賃金が低くても放送の仕事をしたいという若者はいくらでもいる」と20年ほど前に民放連研究所はある報告書で言い放った。総額人件費の削減にあたっては、放送局正社員の一人当たりの人件費を削減するとモラールハザードを引き起こすので、人員を削減すべきとも民放経営者に促し、必要な人員はアウトソーシングで補うべきと主張した。
 民放の社会における影響力が非常に強かった時、民放経営者が生み出した「負の遺産」は影に隠れて可視化されることは少なかったが、その「負の遺産」が、いまや民放=「ブラック産業」という呼称で若者たちから忌避されている。

 私たち民放労連は、放送産業に横たわる「負の遺産」の解消と1万人の民放労連の早期実現をめざした「構内労働者組織化プロジェクト」に6年間にわたって取り組み、「企業内最低賃金協定」の締結をはじめ、構内スタッフへの慰労金やクオカードの支給を経営者に実施させるなどの待遇改善を実現してきた。この取り組みが今年度も構内労働者の組織化につながっている。朝日放送労組では、子会社アイネックス社員の労働条件に関する相談から、18名の朝日放送労組アイネックス支部が結成された。京都放送労組は職場の組合員が日常的に声掛け運動を展開し、目標人数を上回る労働者が組合に加わった。

 来年4月から「パートタイム・有期雇用労働法」が施行される。同一企業・団体における正規労働者と、有期雇用・パートタイム・派遣契約労働者との不合理な待遇格差が禁止される。労働組合の存在と役割を構内スタッフに認識してもらう絶好の機会の到来である。
 今すぐ、構内労働者の雇用形態別の労働条件を把握し、不合理な格差が確認された場合には要求化して是正させていこう。再び、若者たちにとって魅力ある産業になるための起点として労働組合が動き出そう。
  旧態依然とした民放経営者を覚醒させ「負の遺産」を解消するためには私たち民放労連の一層の団結が不可欠だ。企業別に組織されている日本の労働組合の弱点を克服し、未組織労働者の声なき声に耳を傾け、要求を実現させていく。その成果を組織化に結び付け、さらなる要求実現能力を高める。一〇年後の未来も視聴者から信頼される放送を続け、私たちの職場と生活が安定したものであるために、放送で働くすべての労働者の結集を呼びかけていこう。

右、決議する。

 2019年7月28日
日本民間放送労働組合連合会 第129回定期大会

民放労連第129回定期大会「ハラスメントのない社会を!職場を!」(2019年7月28日)

 創立100周年を迎えた国際労働機関(ILO)は6月、スイスのジュネーブで開いた年次総会で、「仕事の世界における暴力とハラスメントに関する条約と勧告」を採択した。条約は、暴力とハラスメントは人権侵害だと明確に規定し、雇用労働者だけでなく、フリーランスやインターン、求職中の人などを広く保護の対象とした。
 ILO総会に先立って、日本では「ハラスメント規制法」が5月に成立した。これまでのセクハラ・マタハラに加えてパワハラにも防止措置が事業主に義務付けられた。しかし、今回の改正ではハラスメント行為そのものを禁止する規定はない。このような姿勢を反映して、日本政府は条約にこそ賛成したものの、ハラスメントを禁止する国内法の整備が求められる批准については消極的な姿勢を示している。採択を棄権した経済界代表の経団連が「上司の適正な指導とパワハラは線が引きにくい」とする主張に忖度したと疑わざるをえない。
 条約の成立を受けて、ILOのガイ・ライダー事務局長が「次の段階は、男女双方に、より良い、より安全で働きがいのある人間らしい労働環境が形成されるように実践に移すこと」と述べたとおり、まずは、政府に国内法整備を強く要請し、すべての労働者のディーセント・ワーク実現に向けた運動を強化しよう。
 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)がおこなった職域横断セクハラアンケートでは1061人から回答があり、見聞きした人を含め、被害にあっても相談・通報していない人は565人で、その理由は「相談しても解決しない」「仕事に支障が出るかもしれない」が多数を占めた。会社や組織が設けた相談窓口に相談・通報した52人のうち8割近くが「不適切な対応」と回答。「事情を話したが、調査もされずに放置された」という人が最も多く、諦めと我慢、放置という悪弊が蔓延している実態が露わとなった。
 またMICでは、各企業の経営者による「ハラスメント根絶宣言」を要求することを加盟各単産で全会一致により決定した。出版労連は今春闘において各組合で取り組むことを確認し、複数の出版社経営者が「宣言」に署名。このうち1社ではパワハラ被害で退職を余儀なくされた労働者の復職につながった。
 「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と憲法第13条は定めている。ハラスメントは個人の尊厳を踏みにじるものと私たち一人ひとりが自覚し、社会からの、職場からのその根絶に向けて一歩を踏み出そう。

 右、決議する。

 2019年7月28日
日本民間放送労働組合連合会 第129回定期大会

民放労連第129回定期大会 大会アピール(2019年7月28日)

 ゴシップのひとつかと思われた吉本興業のニュースは、実情が明らかになるにつれ、雇う側と雇われる側、労使関係の歪みが注目を集めるものとなった。所属タレントによる会社の行く末を心配する声が紹介され、そのブラックな体質に多くの批判が集まった。
 私たち放送産業は「ブラックではない」と胸を張れるだろうか。行く末を心配することなく、安心して働いていける状況だろうか。夢を持った志望者が集まる放送業界を作っていかねばならない。その当事者となる私たちは放送産業の新時代を切り拓くため、ここ広島に集まった。

 大会では、テレビ山口労組からベテラン組合員が執行部に加わることによる運動の継承とそれがもたらした成果が報告された。この春闘で、就活生や若年労働者へのアピールとなる初任給アップや若年層へのベアを獲得した複数組合から力強い報告があった。
 来年4月から施行される「同一労働同一賃金」。私たち労働組合の力が試される機会にもなる。私たち労働者が雇用形態の違いを乗り越えて団結することは、経営者を脅かすほどの大きな力を持つ。ブラック業界と指摘される状況から脱却し若年労働者にも夢と希望をもって働ける職場を残していくことが、私たち世代の使命である。そのためにも、政府が進める「解雇の金銭解決制度」と「裁量労働制の適用拡大」は、私たちの「雇用と生活」そして「いのちと健康」を脅かしかねないものとして、断固として反対する。

 国連では、日本のメディアが、その独立性に懸念が残る状況であると報告されている。今大会でも、報道の自由の大切さとメディアとしての嗅覚の鈍化を危ぶむ報告が北海道放送労組からあがった。視聴者が今の放送に求めているものは、正確で有意義な情報を届けてくれる番組だ。そのために私たちは経営者に「人と番組を大切にする」経営方針への転換を求める。

 安倍首相が5月3日の憲法記念日にも露わにした「改憲への強い意気込み」とは裏腹に、改憲を支持しない層が、支持派を大きく上回る世論調査の結果もある。充分に議論を尽くすことなく、改憲を強引に進めることは、世論を無視した民主主義の破壊だ。国家が優先される一方で、個人の権利や表現の自由が制限される社会の到来を阻止し、民放労連運動に憲法を活かしていこう。

 昨年4月の財務次官によるセクハラ事件以降、あらゆるハラスメントを容認しない声が高まっている。ハラスメントは人権侵害に他ならない。誰もが安心して働ける職場を作ろう。そのために勇気を出して声をあげ、連帯していこう。

 沖縄の辺野古埋め立ては沖縄だけの問題ではない。今年2月の県民投票では圧倒的多数の埋め立て反対票が集まった。この結果を無視して工事を強行する政府の対応は、民主主義も基本的人権も地方自治も、すべてをないがしろにするものだ。私たちは辺野古新基地建設の撤回を求める沖縄県民の意思を尊重する。

 企業の発展を優先した「経済の論理」「効率の論理」では夢のある放送の未来を築いていくことはできない。未来を担っていく労働者のために「人間の論理」を取り戻そう。すべての放送労働者の団結により、労働組合の社会的な使命を果たすとともに、賃上げと労働環境改善で放送の未来をつくろう!

 2019年7月28日
日本民間放送労働組合連合会 第129回定期大会

メディア日誌 2019年4月

◆東京放送ホールディングスの完全子会社で、映像・文化分野を担う「TBSグロウディア」が事業を開始。他の子会社7社の吸収合併を完了した。(4月1日)


◆メディア産業の労働組合が集まる日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)は東京都中央区で「国民の知る権利を守る夜の銀座でも」を行った。(4月5日)


◆NHKは、元専務理亊の板野裕爾NHKエンタープライズ社長(65)を専務理事に復帰させる人事案を固めた。官邸と太いパイプを持ち、政権の意向を番組に反映させたと言われる板野氏の異例の返り咲きに、NHK内部からも批判の声が上がっている。(4月9日)


◆マレーシアの大手映像配信会社アイフリックスは吉本興業と共同で日本のドラマやアニメなどを世界に配信する事業を始める。(4月10日)


◆衆院内閣委員会は、小型無人機ドローンによる自衛隊や在日米軍基地上空の飛行禁止を盛り込んだドローン規制法改正案を与党などの賛成多数で可決した。取材目的の飛行について「国民の知る権利と取材・報道の自由」の確保を政府に求める付帯決議を採択した。(4月12日)


◆脳死して肺を提供した男児(当時1歳)の移植手術の様子を事前に説明なく、テレビ番組で放送されたとして、男児の両親が放送したTBSと手術した病院などを相手取り、計1800万円の損害賠償を求める訴えを広島地裁に起こした。  (4月18日)


◆国際NGO「国境なき記者団」は2019年の「報道の自由度ランキング」を発表した。調査対象の180ヵ国・地域のうち、日本は前年と同じ67位だった。(4月18日)


◆テレビ朝日はバラエティー番組『アメトーーク』(2月14日放送分)で大阪市西成区と同区の高校について、事実と異なる内容を伝え、差別的な表現があったとして同番組内で謝罪、番組公式サイトにも謝罪文を掲載した。(4月19日)

◆中東オマーンで入国を拒否されたことを理由に外務省からパスポートの返納命令を受けたフリージャーナリストの常岡浩介さんが、国に処分の取り消しと損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。(4月24日)


◆厚生労働省は、労働紛争の審査結果を新聞記者に漏らしたとして中央労働委員会の事務局長を戒告の懲戒処分にした。国家公務員法などで禁じる秘密漏えいにあたると判断した。(4月25日)

メディア日誌 2019年3月

◆政府は、NHKがすべての番組を放送と同時にインターネット配信できるようにする放送法改正案を閣議決定した。 (3月5日)

◆権利者の許可なくインターネットに上げられたと知りながら漫画や写真、論文などをダウンロードすることを違法とする著作権法改正案について、自民党の文部科学部会と知的財産戦略審査会の合同会議は、改めて国会への提出を了承した。(3月6日)

◆NHKが6月に予定する組織再編で、『ETV特集』などを制作している「文化・福祉番組部」の分割案が浮上し、現場から説明を求める要望書が出たことについて、上田良一会長は「文化番組や福祉番組を制作する体制はしっかりと確保する」と定例会見で述べた。(3月7日)

◆放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は、俳優の細川茂樹さんが所属事務所から契約解除を告げられたと伝えたTBSの情報番組『新。・情報7daysニュースキャスター』(17年12月29日放送分)について「放送倫理上問題がある」とする見解を発表した。(3月11日)

◆テレビを視聴できるワンセグ機能付きの携帯電話を持つと、NHKの受信料の契約義務が生じるか同課が争われた四件の訴訟の上告審決定で、最高裁第三小法廷は、義務はないと主張する原告の上告をいずれも退けた。契約義務を認め、NHK勝訴とした二審東京高裁判決が確定した。(3月12日)

◆ミュージシャンで俳優のピエール瀧容疑者が麻薬取締法違反の疑いで逮捕され、放送局や映画会社などは対応に追われた。(3月13日)

◆官房長官会見で記者の質問を制限するのは国民の知る権利を侵害しているとして、新聞労連や民放労連などでつくる日本マスコミ文化情報労組会議は、官邸前で抗議した。(3月14日)

◆日本民間放送連盟は、憲法改正の賛否を問う国民投票の際に政党などが流すテレビ・ラジオCMについて、内容などに問題がないか放送前にチェックする「考査」の具体的な留意点をまとめたガイドラインを公表した。3月20日)

◆日本民間放送連盟は、総務省の有識者会議で、AMラジオ局がAM放送をやめてFM放送に転換できるように制度改正することを、正式に要請した。(3月27日)

◆参議院本会議は、NHKの2019年度予算を全会一致で承認した。(3月29日)

メディア日誌 2019年2月

◆2時間ドラマを放送しているTBS系「月曜名作劇場」(月曜午後8時)が3月で終了することに鉈。民放キー局の夜の番組から2時間ドラマのレギュラー枠が消えることになる。(2月1日)

◆民放連は民放テレビ・ラジオの2018年度中間決算の概況をまとめた。地上民放195社の売上高は前年同期比0.5%減の1兆129億円、経常利益は同4.0%増の716億円で減収増益。本業の業績を示す営業利益は同10.6%減の467億円だった。(2月3日)

◆日本新聞労働組合は、首相官邸が東京新聞の特定記者の質問行為を制限したとして、抗議する声明を発表した。(2月5日)

◆内戦が続くイエメンを取材するために現地に渡航しようとしたフリージャーナリスト常岡浩介さんが外務省から旅券返納命令を受け、出国を禁じられたことがわかった。(2月5日)

◆2015年末に新入社員が過労自殺した電通は、労働環境の改善に向けた取り組みの結果として、18年の社員一人当たりの平均総労働時間が1952時間となったと発表した。前年より79時間減った。(2月14日)

◆沖縄県名護市辺野古の米軍進基地建設に関する冬季用新聞記者の質問をめぐり、首相官邸が「事実誤認」「度重なる問題行為」と内閣記者会に文書で伝えた問題で、政府は「改憲の進行への協力依頼にとどまり、報道機関への不当な介入ではない」とする答弁書を決定した。(2月15日)

◆NHKは制作局の8つの「部」を6つの「ユニット」に再編する組織改革を6月に実施する方向で調整に入った。(2月17日)

◆官房長官記者会見での東京新聞記者の質問をめぐり官邸側が「問題意識の共有」を記者クラブに求めたことに対して「日本マスコミ文化情報労組会議」は政府が15日に閣議決定した答弁書を「断じて容認できない」とする声明を出した。(2月18日)

◆電波利用料額の改定を盛り込んだ電波法改正案が2月19日、国会に提出された。電波利用料の総額は現行の年間約620億円ら2割増の約750億円を見込む。(2月23日)

◆菅義偉官房長官は27日の記者会見で、東京新聞記者が26日に会見の意義などについて質問したのに対して「あなたに答える必要はありません」と述べたことについても撤回や修正の考えはないと明言した。(2月27日)

メディア日誌 2019年1月

◆大晦日に放送されたNHK紅白歌合戦の2部(午後9時~同11時45分)の視聴率は関東地区で41.5%、関西地区で40.5%だった。ビデオリサーチが発表した。1部(午後7時15分~同8時55分)は関東地区で37.7%、関西地区で35.2%だった。(1月2日)

◆日本テレビ系で2、3日に中継された「第95回東京箱根間往復大学駅伝競走」の平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は、2日の往路が30.7%、3日の復路か32.1%。同局で放送が始まった1987年以降で往路・復路とも過去最高を記録した。(1月4日)


◆民放連は、総務省の「電波利用料の見直しに係る料額算定の具体化方針案」に異見を提出した。電波利用料とその料額の改定時期を1年早め、地上波テレビ局に大幅な負担増を求める方針案は極めて遺憾と表明した。(1月9日)


◆日本テレビ系のバラエティー番組『世界の果てまでイッテQ!』の祭り企画にやらせ疑惑が指摘されている問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が、審議入りすると決めた。今後、番組関係者の聴取などを行う。 (1月11日)


◆米軍普天間基地の名護市辺野古への移設計画をめぐって安倍晋三首相が「土砂投入にあたりサンゴは移している」と述べ、不正確な説明をしたと批判されている問題で、発言を流したNHKの姿勢も問題視する声が出ている。(1月12日)


◆NHKは2019年度の予算案とし事業計画を発表した。事業収入は前年度比1.1%増の7247億円、事業支出は同2.1%増の7277億円で、9年ぶりの赤字予算となった。順次実施される受信料値下げの影響。 (1月15日)


◆タクシーに乗車した際の車載カメラの映像が民放各社に無断提供され、プライバシーが侵害されたとして、歌手のASKAさんがタクシー会社に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は、タクシー会社に220万円の支払いを命じた。(1月16日)


◆総務省はNHKのガバナンスを強化する放送法改正案を1月下旬召集の通常国会に提出する。(1月17日)


◆放送サービス高度化推進委員会は昨年12月にNHKや民放BS局で始まった4K、8K放送の普及状況を発表した。対応テレビやチューナーの出荷実績などから割り出した視聴世帯の推計は、12月末時点で約45万世帯。 (1月25日)

民放労連第128回臨時大会「ABC事件、労働争議の早期解決を求める決議」(2019年1月27日)

 一方的な契約解除からほぼ1年、大阪府労働委員会で係争中の「平成30年(不)第24号朝日放送グループホールディングス/朝日放送ラジオ事件」は、5回にわたる書面のやり取りによる調査を経て、今年3月から公開の場で行われる審問の段階に移ることになった。

 長年、朝日放送のラジオニュース班で働いてきた5人の派遣労働者は、2017年度末に突如雇い止めとなった。契約打ち切りの合理的理由を聞くため5人は労働組合を結成し、昨年3月、朝日放送に対して団体交渉の開催を求めた。

 しかし、朝日放送側が話し合う姿勢を見せることなく即日拒否したため、組合は府労委に「団交拒否の不当労働行為の救済」を申し立てたのである。

 朝日放送側は組合の団交要求を「府労委申し立てのためのアリバイづくりだ」と曲解して批判したため、組合は昨年10月に重ねて団交開催を要求したが、今度は「その真意を図りかねる」とはね付け、不誠実な対応に終始している。

 組合員が求めているのは、団交を開催して雇い止めの理由を聞くことであり、さらにその先には生活基盤の回復、5人全員の職場復帰を見据えている。組合側には「図りかねる」と言われるよう底意はなく、真意は明快である。

 一方の朝日放送側は府労委の審問において自ら証人を立てることなく「組合側証人への反対尋問で正当性を立証する」と強気の姿勢を示している。

 5人の組合員は、生活基盤を突如失い、苦境にありながらも真摯な話し合いを切望している。朝日放送は自らの正当性に自信があるならなおのこと、団交を開催して正々堂々と組合員に向き合うべきではないか。

 第128回臨時大会に結集した我々は、朝日放送側に対して、速やかに団体交渉の開催に応じ、一刻も早い争議解決を強く求める。

 右、決議する。

2019年1月27日
日本民間放送労働組合連合会 第128回臨時大会

民放労連第128回臨時大会「沖縄県民の民意を無視した名護市辺野古新基地建設に向けた土砂投入作業に断固抗議する決議」(2019年1月27日)

 2018年12月14日午前、日差しを受けて青く輝く沖縄県名護市辺野古の海に、1台のトラックが積んでいた土砂を降ろした。民意を無視し、生物多様性に富んだ海の埋め立てが始まったこの日は、沖縄の記憶に刻まれることになる。埋め立てが始まった米軍キャンプシュワブゲート前で抗議行動を続ける市民は、民意を踏みにじる安倍政権の姿勢に強い憤りをもって抗議した。
 
 昨年9月30日の沖縄県知事選挙。急逝した翁長雄志前知事の遺志を引き継ぎ、普天間基地の名護市辺野古への移設反対を表明して過去最多の得票数で、政権が支援する相手候補を破った玉城デニー知事が誕生した。この知事選で県民は明確に「辺野古移設にNO」を突きつけた。県民はこれまでも全県的な選挙で再三、新基地建設反対の民意を示してきた。しかし政府は知事選後、県が撤回した埋め立て承認の効力停止を申し立てて工事を再開。玉城知事は安倍晋三首相との会談で「民意は圧倒的に反対だ」として、改めて新基地建設を断念するよう求めた。だが政府は一顧だにせず、土砂投入に踏み切った。
 
 埋め立てが始まった護岸で囲まれた区域では作業が始まり、真っ青な辺野古ブルーの海が土砂で茶色に染まった。政府は埋め立て作業を加速することで県民にあきらめムードを植え付け、基地建設の既成事実化を積み上げるのが狙いだ。事あるたびに「沖縄に寄り添う」と発言する安倍政権。だが実のところ基地から派生する爆音や事件事故に悩まされ続ける沖縄の声を聴こうとする姿勢は微塵もない。この現状に県民の怒りは沸点に達している。
 
 その一方で、ここに来て朗報もある。今月23日、全国の憲法学者131人が、政府による辺野古新基地建設の強行は憲法違反であり、工事の中止を求める声明を発表した。全国に約600人いるといわれる憲法学者へも賛同の輪を広げるという。

 また、工事中止を求める米ホワイトハウスへの署名は全世界から約21万筆が集まっている。24日までに呼びかけの発起人である請願者宛に、ホワイトハウスから「私たちはあなたのメッセージを慎重に検討しています」と回答があった。憲法学者の声明もホワイトハウスからの請願に対する回答も極めて異例のことだ。来月24日には、紆余曲折あった辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票も全県で実施されることが決まった。

 辺野古埋め立て問題は沖縄だけの問題ではない。憲法9条と日米安保の問題でもあり、地方自治法と人権、民主主義を問うことからすると、国民すべての問題である。
 私たちは、辺野古新基地建設に向けた埋め立てに対する沖縄県民の民意が示されるまで、政府は辺野古への海に土砂投入作業を即時中止するよう強く求める。

 右、決議する。

2019年1月27日
日本民間放送労働組合連合会 第128回臨時大会

民放労連第128回臨時大会「あらゆるハラスメントを許さず見過ごさず、根絶をめざす決議」(2019年1月27日)

 1992年、日本で最初のセクシュアル・ハラスメント裁判(福岡事件)で、企業に対して「使用者責任として、民法715条に基づくセクハラ防止義務と適切な対処義務がある」との判決が示され、『セクハラ』は人格権を侵害する不法行為であると同時に、企業には、従業員がその尊厳を傷つけられないよう未然に防ぎ、働きやすい職場環境を保つ義務があるとした。
 この事件以降、セクハラ訴訟が相次ぎ、日本の社会にセクハラが根深く蔓延していることが露わとなった。にもかかわらず、政府や国会の不作為により、セクハラを明確に定義し、禁止する法律が不備のままで、セクハラの根絶を遅らせている。

 昨年4月、当時の財務事務次官による放送記者へのセクハラが明らかになった。この記者の告白は、放送に限らずメディア内部の「慣習」や「常識」が個人の尊厳を侵害するハラスメントに該当する場合があるとの気づきを与え、社会の声なき声を伝えるべき私たち自身が、声なき声の当事者でもあることを自覚させることとなった。
 翌5月、新聞や放送、出版などメディアで働く有志によって「メディアで働く女性ネットワーク」が設立された。職場の秩序や業務に影響を与え、被害者の人生に暗い影を落とすセクハラを含むあらゆる人権侵害をメディア内部から撤廃する運動がはじまった。
 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)でも、メディア労働者を対象に調査を実施。回答を寄せた女性233名のうち、実に74%がセクハラを受けたことがあると答えた。また男性も15%が「ある」と回答した。「相談しても解決しない」「仕事に支障が出るかもしれない」「相談内容が他の人に漏れるかもしれない」などの不安により、多くの被害者が相談できず、心の傷をずっと一人で抱え込んでいることも浮かび上がった。

 精神的身体的負担の大きさから、加害者ではなく被害者が職場を去らなければならないという不条理をはらんだセクハラをはじめ、パワハラやマタハラなどを決して見過ごしてはならない。私たち自身がハラスメントの加害者にならないと誓うだけではなく、他者のハラスメントに勇気をもって注意を促し、誰もが働きやすい職場環境作りに労働組合が率先して取り組もう。
 今年6月のILO国際労働機関総会で「仕事の世界における暴力とハラスメント」根絶のための条約の採択準備がすすめられている。これまでの議論で「各加盟国は、仕事の世界における、性差に基づく暴力・ハラスメントを禁止するための国内法令を採択すべき」との文言を盛り込む方向だ。これに対し、日本政府は、態度を留保し、消極的な姿勢を示している。私たち民放労連は、ハラスメント根絶に向けたILOの方針に賛同するとともに、日本政府に早急な国内法整備を求める。

 右、決議する。


2019年1月27日
日本民間放送労働組合連合会 第128回臨時大会